2025年度部員ブログ vol.5 達木英弥(2)
地元の大先輩であり良き人間代表の小柳くんから陸上日記のバトンを受け取りました。初めまして。純短ブロック・法学部・政治学科2年の達木英弥です。
今回、初めて部員日記を書く機会をいただき、同期一発目ということもあり、提出期限のギリギリまでテーマ選びに迷っていました。趣味や今後の目標、陸上を始めたきっかけなど、書くべきことはいろいろありますが、本稿ではあえて、「なぜ私は大学生になっても陸上競技を続けているのか」という、私の根幹にある思いについて綴らせていただきたいと思います。
前後の担当者とは異なり、少し面白味に欠ける内容になるかもしれませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
私は小学5年生から大学2年生までの約10年間、陸上競技を続けてきました。来年は大学3年生。就職活動も本格化し、大学生活の折り返しを迎える来シーズンは、私にとってまさに「勝負の年」の位置付けだと思います。
「大学でも陸上競技部に入り陸上を続けているのだから、さぞ走るのが好きなのだろう」と思われるかもしれません。しかし最近、必ずしも「走ることが好き」という理由だけで続けているわけではない自分に気づきました。
陸上を始めた当初は、運動会の延長線上のような、少し競う相手が増えただけのものだと思っていました。しかし本格的に取り組み始めると、その認識は一変しました。ただ前へ走るだけの動作にある奥深さ、生身一つで結果を突きつけられるシビアさ。考え込んでしまう性格の私にとって、それは時に重く、苦しいものでした。
それでも、素晴らしい指導者や同期、熱いライバルたちのおかげで、当初はタイムが縮む喜びに夢中になれました。しかし、ゴールだけを見据え、ただひたすらに数字を追い求める日々。いつしか私は、電光掲示板に表示される「自分のタイム」しか見えなくなっていました。
その矢印が大きく変わったのが、高校3年生、最後の県総体です。
私の地元は地方にしてはレベルが高く、インターハイ上位を狙えるライバルがひしめいていました。彼らに必死に食らいつき、「次こそは勝つ」と気持ちを燃やして臨んだ100m決勝。しかし、スタート直前に不運にもふくらはぎが痙攣し、そこからハムストリング、腹筋へと広がるように連鎖。万全とは程遠い状態でレースを迎えることになりました。
県大会落ちなら、3年間目指したインターハイへの道が絶たれる瀬戸際。友人や家族が見守る中、無様な姿は見せられないと、鉛のような体を無理やり動かし、走り抜きました。
結果は最下位。
電光掲示板に輝くライバルのタイムと、自分の残酷な順位。今まで経験したことのない屈辱でした。
しかし、ゴール後に私の目に飛び込んできたのは、私の順位に対する絶望ではなく、涙ぐむ友人や、心配そうに駆け寄ってくれる親の顔でした。合わせる顔がない、そう思って当時は泣き崩れました。しかしそんな経験を経て気付いたものがあります。
私はたった一人で走っていたつもりで、実はたくさんの人に応援され、支えられてスタートラインに立っていたのだと。私のレースを見て涙を流してくれる人、励ましてくれる人がこんなにもいるのだと。
振り返れば、私が今日まで陸上を続けてこられたのは、決して私一人の力ではありません。
毎日の食事や身の回りの世話、決して安くはない身の回りの競技道具や遠征費の工面。忙しいはずなのに、当たり前のようにしてくれた競技場への送り迎え。当時はそれが『当たり前』だと思っていましたが、大学生になり親元を離れた今、自分では気づかないところでもどれほど支えられていたのか、その愛情の深さを痛感しています。
また、私のことを指導してくださった恩師の方々。そして、心が日々のしんどい練習のなか声をかけあい、時にはたわいもない話で盛り上がった友人たち。
様々な人が、様々な形で私に関わり、背中を押し続けてくれました。この場を借りて、私を支えてくださった全ての方々に心から感謝を伝えたいです。本当にありがとうございます。
あの日の出来事はよくあるありきたりな物語のようではありますが、「このままでは終われない」と強く思ったのは、自分のプライドのためではなく、「この支えてくれた人たちに恩返しがしたい」という新たな動機が生まれたからでした。
中央大学陸上競技部に入部した今、私は素晴らしい先輩や後輩、同期に囲まれています。彼らは私より遥か高いレベルにいながら、見えないところで凄まじい努力を重ね、全力で自身の競技を楽しんでいます。そんな環境に身を置けることに感謝し、これからの競技人生を歩んでいくつもりです。
陸上競技は、準備してきた結果が数字として出るスポーツであり、レーンを走るのは自分一人という孤独な戦いです。
しかし今の私は、「自分一人のためだけではなく、みんなで表彰台に上がる」ために走っています。物理的には一人の表彰台かもしれませんが、そこに立つまでの過程と喜びを、支えてくれたすべての人と分かち合いたいと改めて思うようになりました。
あの日の悔しさを、ただの「よくある悲劇のエピソード」として終わらせるつもりはありません。10年という歳月をかけて得た「他者のために、走ることを楽しむ」という視点を武器に、必ず結果で恩返しをしたいと思います。今後とも応援よろしくお願いします。
次は高校からの同期であり、もはや腐れ縁とも言える植松康太に引き継ぎます。
昨シーズンも大活躍だった彼ですが、ただ足が速いだけではありません。みんなに好かれる人懐っこさがあり、競技に対しては誰よりも深く考え、トライし、真剣に取り組む姿勢を持っています。そんな魅力あふれる同期のブログに期待してください。
拙い文章でしたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。
達木英弥(2)
次シーズンに向けてこの冬季達木英弥準備中
